袴と日本の伝統色
色が意味を含んでいた日本の衣装
日本の衣装には多くの場合色には多くの意味を持っていたようです。
例えば有名なところでいうと禁色というものがあります。
これは天皇以外は誰も使うことができないと禁じられた色で、紫色が有名ですが、他にも様々な禁色があったようです。
黄櫨染・青白橡・赤白橡・黄丹・深紫・支子・深緋・深蘇芳等があったようです。
明治期以降に天皇の着る黄櫨染と皇太子の着る黄丹以外は規制がなくなったそうです。
歴史に習う冠位十二階では冠位によって色が異なっており、一番高い位から濃紫・薄紫・濃青・薄青・濃赤・薄赤・濃黄・薄黄・濃白・薄白・濃黒・薄黒の順に一目でわかるようになっていたそうです。
また、平安時代の貴族がきていたという十二単は季節によって襲色目の定番が決まっており、例えば春ならば紅梅という赤系統の色目があり、表は紅梅という明るい赤の色を使い裏は蘇芳という深い赤をつかっていました、 他には黄いろと深緑を使った黄柳という色目や薄紫と緑をつかった藤とい言う色目や明るい緑と紫をつかった若紫という色目等がありました。どの色も春を表しており、早春や芽吹く山河を表現した色調であったようです。
襲色目には植物の名をとったものが多く、夏の色目には葵や百合、橘、花菖蒲があり、秋日は女郎花、桔梗、竜胆、落葉色、冬は椿や移菊のほか、初雪や枯色といった季節の風景が色で表現されていました。
現在の日本の伝統色
では、現在の着る袴等にはこうした色についてのしきたり等はあるのでしょうか?
現在まで残っている和装において、色についてのしきたりが残されているのは神社や宮中において使われている緋袴でしょう。平安時代の女房装束では若年層は濃色(濃い紫)で基本食は緋色や紅色が使われていました。巫女の袴が緋色なのはその流れをくんでいるもので、凶事があった際には吉祥を表す紅色を避けてオレンジ色に似た萱草色を用いることもあるそうです。
女学校の制服である女袴が考案された時には、袴は濃色が採用されたのですが、それはこの若年層が着る女房装束が念頭にあったことでしょう。
ちなみに男性の神職の場合には神職の視覚の位階や等級によって差があり、下から浅葱、無地紫、紋付紫、紋付白の順になっているようです。
また、柔道などで一定の位階で黒帯を貰ったりしますが、合気道等では黒袴がそのまま位階を示しているそうです。
稽古着にも着用されているように、大きな動きにも耐えられるようマチがつけられており、どのような体型でも着ることができ、足さばきを自由に出来ること、足さばきを見せないことも理由であったようです。
現在では化学繊維の研究が進み、色も様々なものが出てきています。
新着の柄や文様などは選び切れないほどになっていることでしょう。
日本の伝統色にとらわれる必要はありませんが、自分に似合う色や季節感にあわせて袴や小物などを用意していくといいでしょう。
一方で国際交流等の文化交流では日本の伝統色等も配慮して着物や袴を着てみると、より興味深い交流となるのではないでしょうか。