袴のことわざ
日本語は沢山の身近な言葉からことわざを作ってきましたが、袴が用いられたことわざもいくつかあるようです。
「紺屋の白袴」
一番身近な袴を使ったことわざと言ったら「紺屋の白袴」でしょうか。 読みは(こうやのしろばかま)といい、「こんや」ではないのに注意が必要です。 紺屋とは染色を生業とする職業なのですが、自分の服は自分で染めることが出来るだろうにお客さんを優先して染めることが出来ないでいた状態を見ていわれたことわざです。 類義語に医者の不養生とか髪結いのみだれ髪、等といったことわざがあり、専門的な職業なのにもかかわらず、自分のことは後回しになっていたり、忙しくて手がつけられていない様子を示したことわざとなっています。
「故郷へ錦を飾る」
また、「故郷へ錦を飾る」ということわざも袴が関係しているようです。 類似したことわざでは「故郷には錦の袴を着て帰れ」や「故郷へ花を飾る」といった言葉があります。 このことわざでいう錦とは金糸銀糸で装飾された絹織物のことで豪華な織物をいいます。 成功して身を立てた者が錦の袴を着て、身なりを整えて故郷へ帰ってくることをいうのです。
「馬子にも衣装」
このほか「馬子にも衣装」ということわざがあります。 身分の低い職業の人でも羽織袴を着せれば立派に見えるという意味で、身なりを整えれば見違えて見えるという意味で使われます。身うちの方や親しい人が使う言葉です。 うちの嫁もドレスを着せれば、馬子にも衣装というもので、女優のように美しく見えるといった様に使われます。
「袴の襠に雑魚溜まる」
さらに、「袴の襠に雑魚溜まる」ということわざがあります。 読みは(はかまのまちにざこたまる)といい、思いがけない幸運の例えとして使われています。 袴は動きやすいようにまたの部分に襠を作っているのですが、この部分に何かがたまるなんてほとんどないのではないでしょうか。めったにない幸運、思いがけない幸運として利用されることわざです。
「故郷へ錦を飾る」
是非一度使いたいことわざとしては、やはり「故郷へ錦を飾る」ではないでしょうか。 大学の卒業式などで、女子大生は、ハレの日に、胸を張って故郷へ錦を飾るべく、袴を着て出席してほしいものですね。 手軽にスーツなどで出席する学生も良いと思いますが、「故郷に錦を飾る」姿を体現する機会の一つですから、スーツでは味わえない和装のよさも体験してほしいものです。
家に帰って来た時は、親によっては「馬子にも衣装」といったことわざが使われるかもしれません。 親としてはおむつを変えていたころから知っているわけですから、袴姿を見たらきっと成長に喜びを感じるのではないでしょうか。立派になった姿をみて感動して涙する親御さんも少なくないようです。 中にはハレの日の袴姿を写真に残して、釣り書にも利用する方もいるようです。 袴姿を記念に残して、思い出の一つとして大事にしたいものですね。